医療分野

理学療法士が行うスポーツリハビリテーションとは?

スポーツリハビリテーションとは

「スポーツリハビリテーション」は、主にプロのスポーツチームやアスリートの間において、非常に関係が深いものとされています。
本記事では、理学療法士が行うスポーツリハビリテーションの内容についてご紹介していきます。

スポーツリハビリテーションとは

通常のリハビリテーションでは、患者さんが日常生活を快適に送ることができるようサポートを行います。
ただしスポーツ選手などスポーツを行っている人は、ケガが改善して日常生活を送ることができるようになっても、「競技シーンでは思うようにパフォーマンスを行うことができなかった…」ということも多いものです。
そういったスポーツを行う人の能力が十分発揮できるよう、サポートに努めるのが「スポーツリハビリテーション」です。
一般の患者さんの治療に限らず、スポーツを行う患者さんに向けて、必要となる身体機能・スポーツ動作の改善を図ってリハビリプログラムを作成し、競技特性に合わせてトレーニングを実施します。
また身体のケガは、特定のスポーツを繰り返し行う中で身体の一部分に負荷が集中してしまうことが原因であることが多いです。
その「身体の一部分に負荷が集中してしまう理由」を探り、全身のバランスやスポーツ動作の中から考えて、ケガの原因を解明し、適切なリハビリを行っていきます。

スポーツ選手が怪我から復帰するまで

スポーツ選手が怪我から復帰するまでの流れを見ていきましょう。

メディカルリハビリテーション

ケガを負った直後や手術直後から行われるリハビリテーションが、メディカルリハビリテーションです。
メディカルリハビリテーションでは、日常生活が快適に送れる状態を目指します。
日常生活への早期復帰に加えて、痛み・腫れなどの軽減・関節可動域改善といったスポーツ復帰に向けての土台作りを実施します。

アスレティックリハビリテーション

日常生活が快適に送れるようになった後、競技復帰に向け、パフォーマンスの向上を目的として行われるリハビリテーションが、アスレティックリハビリテーションです。
アスレティックリハビリテーションでは、スポーツ競技を行える状態まで目指していきます。
この時期には、スポーツを行ううえで必要とされる「筋力・関節可動域・全身の持久力・スピード・巧緻性」といった運動能力を、運動に耐えられるだけのレベルまで回復できるようトレーニングを実施します。
また、実際にスポーツ動作を確認しながら、体の使い方や危険な動作が無いかを確認・評価し、再発予防のためのアドバイスも行っていきます。

アスレティックリハビリテーションの流れ

アスレティックリハビリテーション

競技復帰までの間に実施されるアスレティックリハビリテーションは合計で5段階あります。
各リハビリテーションの内容や流れについてご紹介します。

1. 保護期・治療期

ケガを負った直後の炎症・腫れなど、痛みを和らげる作業です。
ケガ直後の48~72時間は患部を冷やし、炎症・腫れを最小限にとどめるよう、介入します。
炎症がおさまってきたら、関節可動域を回復するためのストレッチのほか、筋力維持の訓練を行っていきます。

2. 訓練前期・調整期

患部の腫れが無くなって関節可動域が回復したら、筋力増強のトレーニングを痛みの無い範囲で行っていきます。
最初は、チューブ・ダンベル等を使い、軽い負荷から開始します。
下肢にケガを負っている場合は体重がかからない状態から開始し、徐々に重さがかかるように調整します。

3. 訓練後期・活動期

日常生活を快適に送ることができるようになった時期を目安として、競技復帰を目指した患部周辺の強化トレーニングを導入し始めます。
マシントレーニングなどの単純反復運動から開始し、徐々にフリーウェイトトレーニングへと強度を高めていきます。
この時期には、筋力を7割程度まで回復させるようにします。
なるべく競技に近い動作を行いながら、違和感がないかどうかも、合わせて確認するようにします。

4. 復帰期

競技への完全な復帰を目指し、筋力に限らず、瞬発力・スピードを要するトレーニングを実施します。
実践を踏まえながらのシミュレーショントレーニングも実施しますが、必要に応じてサポーター・テーピングを使用し、患部への負荷を調整します。

5. 再発予防期

同様のケガを繰り返さないよう、身体の機能や能力を維持しつつ、ケガの再発防止に向けてフォーム改善やセルフケア指導を行います。
競技復帰に向け、トレーニングとあわせてケガをしにくい身体づくりも実践していくという、復帰までの最終段階だと言えます。

スポーツリハビリテーションの難しさ

スポーツリハビリテーションも一般的なリハビリテーションも身体の動作改善・身体機能の回復を目指すという部分は一致しています。
ただし、スポーツリハビリテーションは日常生活を快適に送れるようになることはもちろんのこと、スポーツへの復帰・患者さん自身のパフォーマンス向上を最終目的としています。
そのため、一般的なリハビリテーションよりもスポーツリハビリテーションの方が行うべき処置が多く、患者さん一人ひとりのパフォーマンスも異なるため、その点が難しさにも直結してくるのです。
ただ、スポーツリハビリテーションはスポーツをしている人だけが対象というわけではなく、スポーツをしていない患者さんの機能回復や高齢者の日常動作の改善といったことにも役立てることができます。
つまり、スポーツリハビリテーションは、「メディカルリハビリテーション」から「アスレティックリハビリテーション」へと段階的に進められるということなのです。

理学療法士が対応する怪我について

理学療法士が対応する怪我

理学療法士が対応する怪我について、「スポーツ外傷」と「スポーツ障害」の2種類をそれぞれご紹介します。

スポーツ外傷

スポーツ外傷とは、身体に大きな力が急激に加わることで起こるケガのことを指します。
「足を捻って、足が腫れてきた」と言うように、スポーツプレー中に明らかな外力によって負ってしまった不慮のケガを意味しています。
1度の衝撃で起こるケガが多く、その例としては、転倒や衝突などによって起こる捻挫・打撲・骨折・肉離れ・靭帯損傷といったものが挙げられます。
スポーツ外傷の場合、ケガを負った部位・ケガの程度によって、手術やギプスでの固定が必要になることもあるのですが、大半は保存的な治療法で時間経過と共に痛みがとれていくため、治療やリハビリのプログラムを計画しやすいという特徴があります。

スポーツ障害

スポーツ障害とは、スポーツ動作を繰り返し行うことで、骨・筋肉・靭帯など身体の特定部位が酷使され、その負担が積み重なって痛みなどの慢性的な症状が続くものを指します。
このスポーツ障害は、別名「使い過ぎ症候群」とも呼ばれています。
使い過ぎ・体力・体形などが原因となっていることが多く、自分では気づかぬうちに痛みが出ていたということもあるため、周囲や本人自身も原因が分からずに治療が長期化してしまうことも珍しくありません。
スポーツ障害の症状は、重症化してしまうと日常生活にも支障をきたしてしまうことがあるため、初期段階で正しく処置を行うことが大切です。
無理をして競技を続けると、長期的にスポーツを行えなくなったり、手術によって本来のパフォーマンスが十分に発揮できなくなったりする可能性もあるため、違和感がある場合は早めに診察をすることが必要です。
そのほか、普段のトレーニング方法・フォーム・練習時間・施設環境といったものもスポーツ障害を引き起こす原因となることがあるため、まずはメディカルチェックをきちんと行って、筋力バランス・柔軟性・体力などの、スポーツ種目に対しての適性を確認したうえで練習プログラムを計画することが大切です。
また、このようなスポーツ障害になるのを予防するには、ウォーミングアップ・クールダウン・アイシングなどのコンディショニングをしっかりと行うようにし、スポーツ特性とご自身の体力にあったトレーニングを行うことを心がけるようにしましょう。
骨の成長時期には、無理に同じ練習を繰り返し行うのではなく、種目・ポジションといったものを変えていき、痛みが出る部位への負担を軽減させることも重要です。

スポーツリハビリテーションに関わる他の職種

スポーツリハビリテーションに関わる、理学療法士以外の職種をいくつかご紹介します。

アスレティックトレーナー

アスレティックトレーナーは、人がケガをした際の応急処置・ケガの評価・ケガからの復帰までの手順を考案し、サポートしてくれるトレーナーです。
スポーツ現場においてだけではなく、高齢者の方に向け、健康づくりのためのプログラムを作成することもあります。
理学療法士に比べると医学的な知識を学ぶカリキュラムは少ない傾向にありますが、アスレティックリハビリテーションに関する強みを最大限に発揮します。

柔道整復師

柔道整復師は、ケガによって損傷した骨・筋肉・関節・靭帯に対して、柔道整復術を使い治療を行う専門職です。
出血を伴う手術や投薬を行うことなく、整復や固定などの方法で脱臼・捻挫・骨折などの治療を行っていきます。
スポーツの現場、特に柔道によるケガを負ったとしても、すぐに整復などの応急処置に取り掛かれるという特徴があります。

鍼灸師

鍼灸師は、鍼・灸を使って治療を行う東洋医学の専門家です。
鍼・灸を使い、全身にあるツボや筋肉に刺激を与えることによって、自然治癒力を向上させ、病気改善・健康回復を図ります。
スポーツリハビリテーションにおいては鍼灸医療のほか、テーピング・マッサージなど、コンディショニングの場面でその力を発揮することが多いです。

各資格には、それぞれの特色があります。
幅広い範囲でスポーツリハビリテーションに関わるためには、ある程度の知識が必要不可欠です。
「将来、スポーツリハビリテーションの仕事に関わりたい!」という目標を持っている場合には、スポーツリハビリテーションに関わる他の職種への知識も身につけておくことをおすすめします。

おわりに

本記事では、理学療法士が行うスポーツリハビリテーションの内容についてご紹介しました。
理学療法士による医学的知識や動作分析の能力は、スポーツリハビリテーションを行ううえでも必要不可欠です。
一方で、理学療法士だけではフォローが難しい領域も他の専門職と協力をしていくことが重要です。
他職種同士でも互いに技術を認め合って協力しながら、スポーツ業界を支えられる人材が今、必要とされているのです。

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